チケット転売問題が議員にまで持ち込まれた件

 こんばんわ。中の人@livehisです。

サカナクション山口が議員連盟とチケット転売問題を議論、公式リセールも開始へ – 音楽ナタリー

っていう記事が出てましたけど、そうじゃないんですよねー。

 今の状況を招いているのって、返品できない仕組みとか、需給バランスや席の価値を無視した値付けとかが原因なのであって、つまりはサービス提供側の根本的なミスによるものなんですよね。
 今回はサカナクションが表に立ってますけど、別にサカナクションのせいだと言うつもりはなくて、今の仕組みが根本的におかしいからこうなっちゃっているのであって、仕組みを直さないといけない話なんですよ。

 それなのに法律作ってなんとかしてくれって、いわば民間企業の戦略ミスを国に頼ってなんとかしてもらおうとしているわけで、破綻企業に税金投入するのと何が違うんだって話ですよ。自分たちでまず原因を解消する努力をして、国に泣きつくのはそのあとですよ。

 いちおう、

コンサートプロモーターズ協会は公式チケットトレードリセールサービス「チケトレ」を6月1日に開始することを発表。

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コンサートプロモーターズ協会の石川篤総務委員は「病気や出張などで行けなくなった人を救済するプラットフォームが遅れていた」

とのことですが、まず先にそれをやってからって話ですよ。議員に頼るうえは何か自分たちでも頑張ってるってポーズを見せないととりあってくれないから、ようやく対策を打ち出したんじゃないの、ってくらい何をいまさらな話です。

 それにこれって転売で稼ごうとしている人には何の意味もないですからね。高く売れるものをわざわざ定価で売るなんてあり得ないし、売れ残りそうと踏んだら定価リセールに出せば引き取り手が現れる可能性があるとしたら、むしろそういう人たちは大喜びですよ。
 また、プラチナチケットだったらこのマッチングシステムも運しだいということになり、結局「絶対このライブに行きたい!(or絶対最前列で見たい!)そのために金ならいくらでも払う!」という人にとってはこのシステムを使う理由は何一つありません。

 あくまで行けなくなった人を救済するためにシステムとしてこれをやって、さらにそもそも転売することに意味がないような価格や会場設定も行って、それでもどうにもならなければ最後は国に頼るというのが順番だと思います。ただ、そこまでやればたぶん国に助けを求める必要はなくなるはずなんです。

 そもそもが、需要はあるのにお上(この場合主催者側)が気に入らないから、ということで法規制に踏み切ったらどうなるか、アメリカの禁酒法の例を引くまでもなくだいたい想像できますよね。地下に潜るだけなんですよね。

 そうしたらどうなるかっていうと、ダフ屋が復活してくるんだと思いますよ。最近は実際に会場前のダフ屋って激減してますが、これはべつに取り締まりが厳しくなったからとかではなくて、ヤフオクが出てきて客を奪われたからだんだんダフ屋の需要が減っただけなんですよね。もう10年以上前からダフ屋の人たちは「最近はみんなネットで買ってきちゃうんだよね~」ってぼやいてましたから。

 そうすると、単純に行けなくなった人が取引する場は上記のリセールサービスでカバーできるでしょうが、稼ぎたい人は昔ながらのダフ屋に流れる、っていうかリスクを負えない素人が退場してガチのダフ屋が復権することになると思います。

 僕は昔ながらのダフ屋はあれはあれで風物詩っていうかライブならではの風景だと思っているし、ダフ屋がネット転売と決定的に違うところは「当日でもなんとかなる可能性がある最後の手段」だと思っているので、ダフ屋復活に流れるならそれはそれでOKだと思っていますが、そこは覚悟したうえでの今の流れなんですよね??(あるいは逮捕のリスクを覚悟できる本物のダフ屋がヤフオクとかに出品するようになるのかもしれません)

 まあ、「今まで陰でひっそりやる分には目をつぶっていたけど、こうも表に出てこられてはかなわん」というのが趣旨だったら、昔のように地下に潜ってくれればもうそれでいい、ということなのかもしれません。

 なんにしても、どんな法律をつくるつもりなのかはまだこれからですし、論点はいっぱいありそうなのでそもそもできるかどうかもわかりませんが、変なものができないことを祈るだけです。

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 ところで、なんで最近ここまで転売反対運動が激しくなってきたかっていうと、まあ間違いなくチケットキャンプの露出過多のせいだと思います。

 もともと日本のチケット二次流通ってダフ屋しかなかった時代から金券ショップやヤフオクが出てきた時代まで、「わかっている人」だけが騒がずひっそりやっていたのに、チケチャンがバリバリ露出するもんだから、今までそこまで気に留めていなかった人も「ちょっと待てよ、あれはおかしいだろ」ってことになってきたんだと思います。

 転売賛成派もある程度はいるものの反対派のほうがどう考えても多い日本で、あんなことしたら世論がどう動くかなんてだいたい予想できそうですが、そこはベンチャースピリットで「やる前からリスクばっかり言うな、うまくいくかどうかはやってみなきゃわからない」と踏み込んでしまったんだろうなあと思います。
 これ、法務とかがそういうリスクを指摘して露出過多戦略をを止めようとしたのかどうか分かりませんが、でもこういうノリで動いてる会社は法務の反対なんかでは止まらないんだろうなあというのもだいたい想像できます。

 しかしこのチケキャンのやり方は、転売賛成派から見ても残念ながら拙速に過ぎたかな、と思います。もうちょっと二次流通について世間に理解を求めてからやるべきでしたね。「出る杭は打たれる」という言葉もあるじゃないですか。
 ベンチャー的には「突き抜ければ打たれない」みたいなノリなんでしょうし、それも正しいこともありますが、今回は突き抜けきれずにメッタ打ちにあった、というところじゃないでしょうか。

 スタンドプレーに走らず、粛々と二次流通マーケットビジネスを広げているチケットストリートのような手堅い戦略のほうが、チケット絡みのビジネスをやるなら正解のような気がします。

 むしろチケストやチケ流やヤフオクはとんだとばっちりじゃないかと思いますね。これまでなんだかんだ言われながらも確実に存在する需要を拾ってうまいことやってきていたのに、チケキャンが暴走したせいで巻き込まれてしまったわけですから。

 とはいっても、ウチもチケットキャンプとは相互リンクしてたりして、ビジネス自体は応援したいと思ってますが、もうちょっとうまいことやってほしいなあとは思います。

 これで実は、チケキャンが転売サービスを一網打尽に潰すためにわざと騒ぎ立てている反対派のスパイ的企業だったら天才的なセンスだと思いますが、まあそれはないと思います。