[ライブレポ]貴重な「びじゅチューン」コンサートで確認したファンとの絆

 「びじゅつな文化祭 in ららぽーと」と題した、Eテレの人気番組「びじゅチューン」のコンサートが、11月24日にららぽーとTOKYO-BAYにて開催された。11時と14時からの2回の公演が行われ、大盛況のなか幕を閉じたが、ここではその2回目のレポートをお届けしたい。

 開演前から番組に登場するキャラクター「ごめユニコーン」のバルーンがステージ上でオーディエンスを迎え、会場の空気を温める。開演前にスタッフがバルーンを撤去した際に大ブーイングが起こったのも、このキャラの人気を物語っているだろう。

 定刻になり、司会のお姉さんが軽く挨拶をしたあと、スクリーンに「鳥獣戯画ジム」のPVが流れると同時に井上涼(作詞、作曲、歌、アニメーション)が歌いながら飛び込んで来た。人気の美術作品「鳥獣戯画」をモチーフにした名曲に、一瞬で会場のボルテージは最高潮だ。「1、2、3!」のコーラスもオーディエンスが完璧にこなし、一体感を作り出す。

 MCを挟み、「今日は文化祭ということで、ボッティチェリ高校を舞台にした作品を・・・」という紹介から、初期の名曲「委員長はヴィーナス」をドロップ。ボッティチェリのあまりにも有名な「ヴィーナスの誕生」がモチーフのこの楽曲、こちらもオーディエンスの「ダメダメ!」のコーラスが会場に響いた。続くミドルナンバー「睡蓮ノート」はモネの「睡蓮」がモチーフ。なんとこの曲では井上がフロアに降りてオーディエンスとハイタッチをしながら歌うという予想外のファンサービスに、会場は大パニックとなった。サービスが過ぎたか、楽曲終了までにステージに戻れなかった井上は、通路で軽くMCをした後、このコーナーのラストを飾る「指揮者が手」を披露。これは高村光太郎の彫刻「手」がモチーフだ。どの曲も有名な美術作品をモチーフにしているだけに、初めて聞いた人でも楽しめただろう。

 この後は少しトークタイム。この「びじゅつな文化祭」イベントは他のららぽーとでも行われているが、他の会場ではキーホルダーや缶バッチを作るワークショップが開催されており、そちらの様子が紹介された。

 次に披露されたのは、先ほどステージから撤去された「ごめユニコーン」が登場する「貴婦人でごめユニコーン」だ。「貴婦人と一角獣」がモチーフのこの楽曲では、リフレインされる「ごめユニコーン ごめユニコーン」のフレーズとともにヘッドバンギングが巻き起こった。

 続いてはクイズコーナー。スクリーンに表示される3つの美術作品の作者を当てるというものだったが、このイベントに参加するような人なら容易に解答できる問題であった。最初はフェルメールの作品が3枚続けて表示されたが、どれも窓から光が差し込むフェルメールの特徴的な絵画で、分からなかった人はいないであろう。実際、挙手して答えたのは小さな子どもであった。2問目は「(この会場がある)千葉県出身の方の作品です」と紹介された上での問題だったが、これもまた難しくはなく、「見返り美人図」が表示された時点でほぼ全員が「菱川師宣」だと分かっただろう。

 実は、この問題の正解者が多かったら次の曲は写真撮影OKという、当然(?)正解できる前提のサプライズが用意されていたのだ。全員の予想通りに「見返りすぎてほぼドリル」のPVがスクリーンに映ると、いっせいにスマートフォンを取り出したオーディエンスが井上にカメラを向ける。再び客席に降りて撮影しやすいようにポージングをしながら歩く井上に、会場は大いに盛り上がっていた。

 次に用意されていたのは、なんとリクエストコーナー。これまでに発表された楽曲の中からその場で3人の観客にリクエストを聞き、一番拍手が多かった楽曲を歌うというのだ。この回では「縄文土器先生」「アルルの訳あり物件」「その天女、柄マニアにつき」がリクエストされ、スタッフの厳正な(?)審査の結果、「アルルの訳あり物件」と「その天女、柄マニアにつき」が優劣つけがたいということで、2曲が披露された。
 このイベント時点の最新曲と、番組のかなり初期に発表された楽曲が選ばれたというところにも、「びじゅチューン」がいかに長期にわたってファンを獲得してきたかがわかるというものだろう。
 ちなみに、1回目は「アルルの訳あり物件」「祖母のコロッセオハット」「ザパーンドプーンLOVE」の3曲がリクエストされ、「祖母のコロッセオハット」と「ザパーンドプーンLOVE」が採用されたことを付け加えておく。

 さすがに正真正銘のリクエストだけに、「その天女、柄マニアにつき」では歌い出しをミスしてやり直しをする場面もあったが、それもそのはず。なんとこの日の井上はイヤモニを使わず、会場に流れるオケに合わせて歌っていたのだ。いくらそこまで大きくはない会場とはいえ、これはなかなか難しいだろう。それでもキッチリ歌いこなす井上もさすがプロだ。

 そしてラストの楽曲は「武蔵の遅刻理由」。イベントを締めるにふさわしいロックチューンで、最高潮に盛り上がった約45分のイベントは幕を閉じた。

 「びじゅチューン」は楽曲メインの番組でありながらコンサートイベントの開催があまり多くなく、非常に貴重な機会だったが、期待を裏切らない素晴らしいイベントであった。今後も、もちろん番組が長く続くとともに、こういったイベントをたくさん開催してくれることを期待したい。

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